抗がん剤の種類や副作用などについて

抗がん剤の種類や副作用などについて

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正常な細胞とがん細胞の大きな違いは、その増殖の仕方にあります。正常な細胞は必要に応じて分裂し、充分な数になった時点で増殖が止まるのに対し、がん細胞は体の中で増殖を続け、治療をしなければ患者を死にいたらしめます。

 

細胞分裂のサイクルを「細胞周期」と呼び、G1期、S期、G2期、M期に分けています。細胞周期の休止期間はGO期と呼びます。

 

G1
次のS期に備えて、RNAやたんぱく質を合成します。G1期の期間は細胞によって異なります。

 

S期
6〜8時間かけて遺伝子物質のDNAを合成します。

 

G2期
次のM期に備えて、RNAやたんぱく質を合成します。期間は2〜4時間です。

 

M期
細胞が二つに分裂します。期間は30分〜1時間です。

 

 

抗がん剤は、これらのうち、特定の細胞周期を狙って投与することで、がん細胞を死滅へと導きます。これまで使用されてきた抗がん剤の中でも、代謝拮抗剤は細胞分裂が活発な特定の周期に効果を発揮します。

 

一方、アルキル化剤や、プラチナ製剤は細胞分裂の期間のみならず、分裂休止の時期にも細胞を死滅させようとするので、成長の緩やかなタイプのがんにも効果があります。一方、がん細胞だけでなく、正常な細胞も攻撃してしまう副作用が大きくなります。

 

抗がん剤の種類や副作用などについて

 

アルキル化剤

がんのDNAの塩素にアルキル基を結合させ、アルキル化させることで、DNAを複製できなくし、遺伝情報の伝達を邪魔します。細胞分裂している期間だけでなく、休止しているGO期にも治療効果があります。

 

プラチナ製剤

白金を含んだ薬剤で、DNAの鎖に結合するので、DNAの複製やたんぱく質の合成をできなくします。どの細胞周期でも効果があります。

 

代謝拮抗剤

がん細胞のDNAやRNAの分子に化学構造が似ているため、代謝過程に取り込まれて、代謝を邪魔します。DNA鎖の複製が不完全になり、がん細胞は死滅します。細胞がDNAを合成する間に、一定の濃度で投与することで効果が出ます。DNAが合成されるS期に使用します。

 

抗生物質

抗生物質は細菌類など微生物からできる薬ですが、中でもがんに作用するものを、抗がん性抗生物質と呼びます。がん細胞のDNA鎖に橋のような結合をつくったり、RNAの合成を邪魔することで、たんぱく質を作れなくするなどして、がん細胞を死滅させます。

 

トポイソメラーゼ阻害剤

DNAが複製される際、DNAがほどかれるプロセスがありますが、トポイソメラーゼという酵素の一種が、細胞内にたたまれているDNAをほどいて、鎖を切断したり、くっつけたりしてDNAの複製、たんぱく質の合成を助ける働きをしています。

 

トポイソメラーゼ阻害薬とは、カンレンボクなどの植物から抽出された、アルカロイド系の抗がん剤の一種で、トポイソメラーゼと結合させて、DNAの合成を妨害することによって細胞を死滅させます。がん細胞は分裂を繰り返すので、トポイソメラーゼを妨害することで細胞を死滅させることができます。

 

微小管阻害剤

微小管とは、チュブリンというたんぱく質が連なってできた物質で、細胞分裂のときに染色体を2つの細胞に分配する働きがあります。微小管阻害剤は、植物アルカロイドとも呼ばれ、その中でも、針葉樹イチイから抽出されたタキサン系抗がん剤は、微小管に結合することで、二度とチュブリン同志が離れられなくなるようにし、細胞分裂を妨げます。

 

ニチニチソウから抽出されたビンクリスチンという薬は、チュブリンがくっついて微小管をつくるのを妨害します。この作用により、細胞周期G2期でがん細胞を食い止めることが可能です。

 

分子標的薬

1990年以降、分子生物学が発達し、がん細胞の分化、増殖、悪性化に作用する分子の存在がわかってきました。外からがんに増殖を働きかける分子や、がん細胞表面でそれを受け取る受容体、がん細胞の中で増殖を指示する分子、細胞周期をコントロールする分子、細胞に自滅させる分子、細胞に薬剤への耐性をつくる分子、がんの転移にかかわる分子、がんに血管を伸ばしていく分子、がん細胞特有の表面に突き出している分子(がん抗原)など、多くのものが発見されました。

 

これらの分子を標的として、その働きを邪魔し、がん形成を阻止するのが、分子標的薬です。イマチニブや、イレッサ(商品名)などがその代表で、1990年代の終わりから使われています。従来の薬剤にも標的となる分子がありましたが、正常な細胞にも作用してしまい、骨髄や、胃腸が傷ついてしまうことがありました。

 

分子標的薬は、がん細胞の分子だけを標的にすることを目的に開発されたので、皮膚の発疹や、間質性肺炎発症など、多少の副作用はあるものの、最低限の副作用に抑えられます。がん治療の分野において、今後の進展につながる治療薬であるといえます。

 

 

しかし、この分子標的薬も完璧とはいえません。分子標的薬だけの治療はいうまでもなく、他の薬と併用したとしても、患者の生存率がぐっと高まるわけではありません。また、分子標的薬は、開発費が膨大にかかったためにとても高価です。患者とその家族に費用面での負担がのしかかってきます。

 

高価な割には効果が低いことを理由に、イギリスでは乳がんと大腸がんにベバシスマブを使用することを承認していません。アメリカにおいても乳がんに対するこの薬の使用は、その効果と副作用に疑問が投げかけられ、承認が取り消されました。

 

ホルモン療法

前立腺がんや乳がんのがん細胞には、性ホルモンを受け取るホルモン受容体という分子がありますが、これはホルモンを受け取ることで、がん細胞の増殖を促します。これらのがん患者には抗ホルモン薬が投与されます。

 

イギリスのトーマス・ビートソンは1870年代、まだ性ホルモンが発見される前に、卵巣からの分泌物が乳腺を刺激することを発見し、乳がん患者の卵巣を全部摘出することで乳がんが消えるという観察結果を明らかにしました。これはその後のホルモン療法の糸口となったのです。

 

このようなホルモン療法は、がん細胞を攻撃する抗がん剤とは違い、おだやかにがん細胞の増殖をおさえる方法なので、副作用も軽めです。乳がん細胞表面のホルモン受容体が多い患者は、ホルモン療法の予後が良い傾向があります。


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