がん細胞の増殖を判断するためのバイオマーカーとは?

がん細胞の増殖を判断するためのバイオマーカーとは?

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TNM分類での診断結果から、病状の経過は、ほぼ予測できますが、中にはW期と診断されても、その後長く生きのびるケースもあれば、I期と診断されたのに治療後、再発してしまうケースもあります。がんの生物学的性質が良い場合と悪い場合によって異なってくるのです。

 

分子生物学の発達により、1990年代から、がん細胞の増殖や広がりに作用する分子の存在がわかってきました。近年の遺伝子解析の発達もあり、がん関連遺伝子も新しく見つかってきています。がん細胞の変異に関しても、細胞の増殖に影響のあるものと、ないものに分けられることがわかりました。(ドライバー変異とパッセンジャー変異)

 

がん細胞の増殖にかかわる分子の中でも、バイオマーカーと呼ばれ、がん細胞の生物学的性質が良いか、悪いかの判断を助ける働きのあるものがあります。最近がん治療薬の中で分子標的薬が注目されていますが、ある種のバイオマーカーはこれらの薬の治療効果を予測するのに一役買っています。

 

がん細胞の増殖を判断するためのバイオマーカーとは?

 

今後、分子標的薬それぞれに適したバイオマーカーが見つかれば、患者ごとにぴったりの治療薬を選ぶことができるようになります。つまり無駄な投薬を抑え、効果のある薬だけを選ぶことができるようになるのです。近年、がんのバイオマーカーを調べることで効果的な治療をする方法が積極的にとり入れられ、その効果が報告されています。

 

例えば、進行が速く、治癒しにくいといわれる乳がんは、がん細胞を増殖させる分子(HER2)が多いのですが、分子標的薬トラスツマブの使用により、治療効果をあげています。大腸がんの中でも遺伝子に変異のないがん(K-RAS)では、がんを増殖させる分子に結合する抗体医薬品のセツキシマブ、パニツムマブの効果が確認され、日本でも使用されています。

 

肺がんに使用されているゲフィチニブは、副作用で問題になったイレッサ(商品名)のことですが、当時、各患者の遺伝子の変異を確認せずに使用されていたものの、今ではがん細胞を増殖させる分子の遺伝子(EGFR)が変異している患者に効果があることがわかりました。

 

 

このように、分子標的薬の開発が進み、それに合うがんの遺伝子検査(コンパニオン診断)も保険適用されていることから、無駄のない、効果的な治療が可能になってきたのです。特に進行しやすい乳がんでは、遺伝子の解析ができるようになりました。患者のもつ、がん細胞のいくつもの遺伝子について、発現や変異の状態を全部同時に調べられるツールがでてきたのです。

 

詳しい解析結果をもとに、転移や再発の可能性、患者に最も適した治療方法が決められます。これまでは、結果的に効果がないのにもかかわらず、治療効果を期待して、患者が副作用に苦しみながら抗がん剤の投与を続けるケースがありました。しかし、遺伝子の解析により、効果がないと判断された抗がん剤は投与されなくてすむようになったのです。

 

 

このように治療法が進化しても、乳がんの中には既存の薬では効果のないものもあります。今後は、この種類のがんのバイオマーカー発見に力が注がれています。最近では、がん幹細胞に注目が集まっています。

 

これは細胞学的にみて、がんの構造の根源であるとされている細胞集団です。自己複製や分化の能力に優れ、腫瘍を形成することができるがん幹細胞は、治療に対して強い抵抗を示します。このようながん幹細胞を標的とした治療こそ、がん根絶を目指す次なるステップとなるでしょう。


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