癌の免疫療法とは?

癌の免疫療法とは?

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がんが発症しても、治療なしに自然に消滅したり、成長が止まったりというケースが時々あります。これは、患者の免疫機能が非常によく作用したと推測されます。免疫とは毒物や病原体が外部から入ってきたときに、それをやっつける自己防御機能です。

 

がん化した細胞には、細胞表面に異常を示す目印である、抗原が現れます。免疫細胞である樹状細胞がそれを見つけると、キラーT細胞にこのがん細胞をやっつけるよう指示をだします。がん細胞がごく少ないうちであれば、キラーT細胞のこの攻撃でがんは全滅します。

 

癌の免疫療法とは?

 

しかし、この時点でがん細胞が全滅しなければ、残った細胞がさらに増殖していき、もはや免疫機能には歯が立たなくなってしまうのです。この免疫の力を人工的に強めて、がん細胞に対抗しようというのが免疫治療です。

 

免疫療法は、手術、化学療法、放射線治療の三大療法に比べて、副作用が少ないことから、患者の生活の質(QOL)を保ちながら治療を続けることができます。

 

がんワクチン

がんワクチンには、がん細胞の表面に現れる抗原を人工的に合成したペプチドというたんぱく質の断片が入っています。これらを一度にたくさん体内に入れると、免疫細胞の樹状細胞が、異常事態と判断し、キラーT細胞に警告を出します。

 

キラーT細胞もこの警告でパワーアップしてがん細胞の攻撃を行います。がんワクチンは、多くの患者がもつ抗原を複数入れることで、そのうちどれかに効果があることを見込んで使います。製薬会社が医薬品として大量生産できるメリットがある一方、かならずしもその患者のがん抗原に一致するとは限らないという欠点もあります。

 

アメリカでは、2010年、前立腺がん用ワクチン、シプリューセルT(商品名プロペンジ)が認可されました。これは、ほとんどの前立腺がんの抗原に対応している点から、免疫細胞療法により近い治療ができます。

 

免疫細胞療法

樹状細胞療法が、代表的な免疫細胞療法としてあげられます。治療を受ける患者自身のがん細胞を抗原として使うこの方法では、採取した血液中の樹状細胞にがん細胞を認識させ、再び体内へ戻します。

 

体内へ戻った樹状細胞は、キラーT細胞に攻撃すべき敵であるがん細胞の情報を伝えます。つまり、患者がもつがんに対する情報が正確なので、免疫機能が確実に強化します。反対に、キラーT細胞など攻撃部隊の細胞を体外で増やし、体内に戻す手法もあります。

 

抗体製剤

分子標的薬の抗体製剤が、がん細胞内での増殖伝達を遮断させるものであるのに対し、免疫療法における抗体製剤は、免疫の強化を引き出すものです。例えば、2011年アメリカで認可された悪性黒色腫向けの抗体製剤イピリムマブがあります。

 

リンパ球の一種であるT細胞が免疫活動の命令をだすのですが、一方T細胞の働きを抑えようとする分子も存在します。イピリムマブはこの分子にくっつくことで、分子の働きを抑えこみます。つまり、免疫活動の邪魔になる分子を抑え込むことで、免疫力を強化することができるのです。


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