がん医療における患者の権利とは?

欧米圏では、患者の権利はどうなっているか?

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欧米では、患者の人権擁護が確立されていますが、それには歴史的背景が関係しています。1940年代ヨーロッパで、ナチスがユダヤ人に対して行った、大量虐殺と人体実験を省みて、1947年にニュールンブルグ綱領が作られました。

 

これにより、臨床研究において被験者の意志を重んじ、被験者に被害が及ばないように保護されるようガイドラインが設けられたのです。その後、1964年世界医師会においてヘルシンキ宣言が採択され、臨床実験における被験者の人権を守ることを、医学研究者らが約束したのです。

 

アメリカでも、公民権運動後の1972年、アメリカ病院協会により、患者の権利章典が発表されました。

 

日本においての患者の権利

 

日本における患者の人権擁護については、欧米のような歴史的経緯はなく、欧米での概念に倣っている状況です。ヘルシンキ宣言においてその必要性を勧告された、インフォームド・コンセントは、患者があらゆる医療行為について医師側から充分な説明を受け、理解した上で合意をする、という考え方ですが、日本においては、1980年代に急激に広まりました。

 

このインフォームド・コンセントが、日本における患者の人権擁護を示す代表的な考え方だといえるでしょう。

 

がん医療における患者の権利とは?

 

医学においての決定権所在の変化とは?

 

1960年代まで、医療行為はパターナリズム(父権主義)と呼ばれる「強い立場(医師)にあるものが、弱い立場(患者)の利益になるように、弱い立場の意志に反して、介入、干渉する」スタイルが主流でした。つまり、医療は専門知識が必要な技術なので、専門家である医師が最適な治療を選択できるうえ、患者にとって医師は父親のようなものだから、治療についてはすべて医師にゆだねるべきだ、という考え方だったのです。

 

1970年代に入り、根拠に基づく医療(EBM)が広まってくると、客観的な医療データが次々と明らかにされ、それにともない医師や医療施設に対する不信感がでてきました。また医学が発達したことで、治療法も様々になり、さらに患者の価値観も一様ではなくなってきました。そして医師が選ぶ治療法が患者にとってかならずしも最良のものではない場合もあることがわかってきたのです。

 

 

一方、患者の人権擁護の立場からも、これまでのパターナリズムにもとづく医療の決定システムに批判の声があがり、治療における様々な決断は患者自らが行うべきであるという意見もでてきています。 

 

しかしながら、やはり患者が最良の治療を選ぶのは難しいので、医療側の判断に重きを置くべきだという考えも根強くあります。医療側は学術的知識を豊富にもち、臨床例を数多く見てきていることから、的確な決定ができる環境にあるはずだというわけです。

 

このように、医療の決定方法について様々な議論がありますが、最良の治療を決定するのに一番大切なことはなんでしょうか。それはパターナリズムの根絶を目的とするのではなく、医師と患者が、お互いの考えを尊重し、一緒に治療を進めていこうとする気持ちの上での合意ではないでしょうか。


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