細胞の分化を抑制するしくみ

細胞の分化を抑制するしくみ

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細胞の増殖を抑えるしくみは他にもあります。もうひとつ、大事な抑制システムがあって、それは「細胞が分化する」、つまり細胞が筋肉細胞や神経細胞などの特別な能力を持つ細胞に変化することです。

 

細胞の増殖と分化は、密接な関係があります。細胞の多くには、分化は増殖している間は抑えられていて、増殖が止まると分化するようになるシステムが備わっています。分化がある一定のところまで進むと、細胞はそれ以上増殖できなくなります。

 

細胞の分化を抑制するしくみ

 

別の見方をすると、細胞の分化が何かの原因で進まなくなると、細胞は延々と増え続けるということになります。前に書いたように、細胞には分化を促進する遺伝子と、分化を抑制する遺伝子が備わっています。細胞の分化をうながす遺伝子のはたらきが止まったり、逆に分化を抑える遺伝子が異常なほど活発に働き出すと、細胞の増殖がそれ以上とまらず、がんが発生すると考えられています。

 

ひとつの例に、アフリカの子どもにたくさん見られる悪性リンパ腫の一種(パーキット・リンパ種)があります。これは、ちゃんと分化していないリンパ球が異常に増えてしまうがんです。白血病やリンパ腫などには、「転座」といわれる染色体の異常がよく起こります。

 

 

転座とは何かというと、ある染色体の一部が別の染色体の一部と入れ替わることを指します。リンパ種や白血病では、たまにがん遺伝子が転座して、別の遺伝子とつながることがあります。その結果、がん遺伝子のはたらきを細胞がコントロールできなくなり、がんが生まれます。

 

たとえば、パーキット・リンパ腫の場合は、「ミック(myc)」という遺伝子が制御できない状態になります。最初はトリ白血病ウイルスに組み込まれていたことから見つかったこの遺伝子は、細胞の分化を制御し、増殖を促進するはたらきをもっています。

 

 

正常な細胞では、ミック遺伝子の発現はきちんとコントロールされています。しかし、リンパ球に分化するはずの細胞の中で染色体転座が起こってしまい、その問題のミック遺伝子が「抗体」の遺伝子と融合してしまう場合があります。

 

病原体や毒物を見分けるはたらきをするのが抗体という物質で、リンパ球の中でたくさん生産されています。要するに、この種の細胞内の抗体遺伝子は、ずっと活動し続けているのです。

 

なので、もしミック遺伝子が抗体遺伝子とつながってしまうと、本当はスイッチを切らなければいけない時も働き続け、細胞の分化を止めてしまいます。結果、リンパ球になるべきだった細胞は、普通は分裂をやめて分化し、抗体を生産しなければならないのに、分化せずに増え続けることになるのです。


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