遺伝子の変異は偶然なのか?

遺伝子の変異は偶然なのか?

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いろいろな遺伝子の変異が、がんを特徴づけています。こういった変異は一気に起きるものではなく、だんだん積み重なっていきます。良性腫瘍が長い間放置されると、がんが生じることがあるのはそのためです。

 

ところで、がん化することを少しずつ後押ししているこういった変異のうち、がん遺伝子の活性化は、1段階の変異で起こる可能性があります。しかし、がん抑制遺伝子の作用が完全にストップするには、2段階の変異が必要です。

 

遺伝子の変異は偶然なのか?

 

これは、細胞がすべての遺伝子を2セットずつ所持しているからです(精子と卵子は例外で、1つずつしか含んでいません)。こういったことを合わせて考えると、がん細胞で起きている遺伝子の変異の数は、全部で10個前後になっている可能性があります。

 

となると、「これらの変異は、それぞれが偶然に起きてできたことなのか?」と考える必要がでてきます。本当は偶然ではなく、それぞれの突然変異に何らかのつながりがあるのではないでしょうか?

 

 

たとえば、ある種類のがんでは、非常に多くのDNAの複製ミスが起こっています。またがん細胞では、染色体の形や数に異常が頻発することも、前から分かっていることです。正常な細胞の染色体の数は46本なのに、がん細胞は80本もあったりするのです。

 

実は正常な細胞でも、DNAはしょっちゅう損傷を受けたり複製ミスが起きていたりします。それなのに、正常な細胞の伝達情報が簡単に変わらないのは、細胞に傷や複製ミスを治すしくみが備わっているからです。「細胞を自殺させる遺伝子」の項目でも述べた分子は、このしくみを監督する重要なもののひとつです。

 

 

遺伝子異常によって、突然変異が加速する

 

しかし、万が一こういったしくみが何かの理由でうまく働かず、DNAの修復が終わらないうちにその複製が始まったらどうなるでしょうか?遺伝子は変異したままの形で定着し、分裂して新しく生まれる細胞にそれが引き継がれます。

 

高い発がん性を示す遺伝病はたくさん知られていますが、その原因になる遺伝子の大体の部分が、DNAの複製や修復に関係する分子をつくることが分かっています。このような遺伝子に異常をもつ細胞では、突然変異が急激に起こり、今まで述べてきた“がんらしい性質”が簡単につくられてしまうと考えられています。

 

 

また、がんはよく薬剤耐性を取得しますが、これはがん細胞がもつゲノムが不安定なので、それを反映しているものだといわれています。さらに、前述した「がんの進化論」に戻って考えると、正常な細胞から利己的な細胞へ進化することを後押ししてしまう遺伝子変異が起こっているということになります。

 

こういう変異の効果を抑えることができれば、がんの予防や治療の幅がもっと広がるのかもしれません。


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