なぜがん細胞は、利己的に振る舞うのか?

なぜがん細胞は、利己的に振る舞うのか?

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DNAには、その生物がつくることのできるすべてのたんぱく質(部品)の構造と、それらをひとつひとつを取り出すためのスイッチが書き込まれています。個々の細胞は、常時まわりの状況を察知することにより、タイミングを見極めて、たんぱく質合成の指示をするたくさんのスイッチのON・OFFをします。

 

その結果、細胞自身の挙動や性質に変化が起こり、生体全体と調和し、それに合った役割が果たせるようになるのです。がん細胞もしくは腫瘍細胞とは、生態維持や個体発生に必要な、こういったシステムに異常をきたし、個体全体と自分自身との調和がとれなくなり、ある意味単細胞生物のように“利己的”な性格をもつようになった細胞だといえます。

 

なぜがん細胞は、利己的に振る舞うのか?

 

ただし、すべての悪性腫瘍(がん)が、そのような異常を起こした細胞から発生するわけではありません。たとえば、発生の初期段階にのみ影響がある調整システムの異常は、流産や奇形などという形で現れてきます。人間が流産する確率は数パーセントもありますが、これは、個体発生が失敗することによって異常な胎児が生まれる頻度の高さを表しています。

 

一方、腫瘍の種類によっては、ある大きさで成長を止めてしまったり、自然になくなってしまったりするものもあります。生態維持や個体発生に影響を及ぼすような生体調節システムの異常のなかで、ある特別な条件を満たすものだけが、がんの原因になっていると考えられています。

 

 

がんの原因となる遺伝子

 

では、がん細胞は一体どうやって“利己的”になっていくのでしょうか?一般的ながん細胞の性質を分けていくと、次の9つに分類できるといわれています。

 

  1. 外部からの指示がなくても分裂し増殖する。
  2. 「増殖を止めなさい」という命令があっても無視する。
  3. 死ぬべきときにでも生きている。
  4. 老化はせず分裂を続ける。
  5. 自分の周りに血管を呼び寄せる
  6. 体内の同じところに留まらず、浸潤・転移をする。
  7. 呼吸はせず、発酵によってエネルギーを得る。
  8. 免疫の監視に引っかからない。
  9. 遺伝子に突然変異を引き起こしやすい。

 

ただし、全部のがんがこれらの条件をすべて満たしているわけではありません。ただ、一般的に、臓器によって固形がんには差はあったとしても、該当する条件が多ければ多いほど悪性の度合いが高くなります。

 

そこでここからは、遺伝子のどの変異がこのような性質を生み出すのかを見ていきましょう。なお、Gの免疫に関しては、まだ解明されていないことが多いので、別の項目で考えていくこととします。


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