がん遺伝子が存在する場所とは?

がん遺伝子が存在する場所とは?

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遺伝子の異常が引き起こす病気が、がんです。現在ではこれは確立された事実であり、疑うがん研究者はいません。しかし、遺伝子が人間にがんを発症させる直接の原因であることが科学的に証明されたのは、1980年代にはいってからでした。

 

人間の体をつくっている細胞は、必要なときに分裂や増殖をして、いろいろな物質をつくり出し、必要があれば自ら“自殺”をし、体全体を正常な状態に維持しています。こういった指示を細胞に出しているのは、細胞それぞれの中にある遺伝子です(遺伝子を構成しているDNAがたんぱく質に巻きついて折りたたまれたものを染色体といいます)。

 

 

もし、何かの原因があって、それらの遺伝子の一部が変異する(書き換えられる)と、細胞は今までとは違うはたらきをはじめ、それによって人間は病気になることがあります。とりわけがん細胞は、いろいろな遺伝子の変異が積み重なって、細胞が正しい働きをしなくなったときに生じます。細胞の変異でとても重要なのが、分裂細胞に関連した遺伝子の変異です。

 

ふつう、正常な細胞は隣り合う細胞と触れ合うと分裂や増殖はおこないません。しかし、何個かの遺伝子が変異することで、「分裂しなさい」という命令を何度も出したり、逆に「分裂を止めなさい」という周りの命令を無視して増え続けたりします。そうなると何が起こるでしょうか?

 

がん遺伝子が存在する場所とは?

 

その細胞は、隣の細胞とくっついていてもかまわず分裂や増殖を繰り返し、自分からは絶対に死なない不死の細胞、つまりがん細胞になります。正常な細胞がこういった異常な性質をもつことこそが、細胞が「がん化」するということです。

 

このうち細胞に延々と分裂・増殖を繰り返させる遺伝子を「がん遺伝子」とよびます。このがん遺伝子は、いつもは周りからある一定の指令を受けたときのみ活動します(この状態では「原がん遺伝子」ともいいます)。しかし一度遺伝子が変異してしまうと、周りの指令は無視してはたらき続けるようになります。

 

 

がん遺伝子というのはたくさんあり、その中には細胞を増殖させる信号物質(ホルモン)を生産する遺伝子や、その信号を受信するたんぱく質を生産する遺伝子などがあります。一方、こういったがん遺伝子の活動を食い止めるためにはたらく「がん抑制遺伝子」というものもあります。

 

がん抑制遺伝子にもいろいろな種類があり、細胞に分裂をしないように指示するものや、損傷をうけた遺伝子をもつ細胞を自殺させるものや、細胞同士をくっつけて組織を作成させるものなどがあります。

 

 

こういった働きを持つ、がん抑制遺伝子にまで変異が起きてしまうと、細胞の増殖を止めるものはなくなり、がん化が始まります。それまでにがんが生じている場合は、がん細胞は今までより悪性になります。がんが発生するには、がん遺伝子の変異のほかに、がん抑制遺伝子の変異も必要になってくるのです。

 

この2種類の遺伝子の違いは、がん遺伝子は変異により活発に活動するようになったり、それまでとは違うはたらきをしてがんを生み出すのですが、がん抑制遺伝子は、変異することによって本当に必要な役割を止めてしまうためにがんを生み出します。

 

 

さらに、がんやその他の重大な病気の要因になる遺伝子(DNA修復遺伝子)も発見されています。この遺伝子は細胞の中のDNAの損傷を受けた部分を修復したり、遺伝子の複製ミスをなおしたりするしくみと関係があります。

 

なので、この遺伝子が変異してしまうと、細胞内の他の遺伝子まで変異の確率が高まります。つまり、がん遺伝子やがん抑制遺伝子に変異が起きる可能性も高くなるので、がんになりやすくなるのです。

 

事実、体のいろいろなところに多発的に生まれるがんや、転移しやすいがんでは、多くの場合細胞内のDNA修復遺伝子が変異を起こしています。DNA修復遺伝子が変異したとしても、直接がんの原因になるわけではないのですが、がんを悪化させる大きな原因となることが分かっています。

 

 

このDNA修復遺伝子の活性化を促進させるp53は、特にがん化を抑制させる能力に長けているがん抑制遺伝子であることが知られています。どのがん遺伝子、またはがん抑制遺伝子に変異が起きると、どのような過程で特定の組織にがんが生まれるのか、そのしくみについては少しずつ解明されつつあります。

 

がんに関係する遺伝子はたくさん発見されています。ただし、遺伝子に異変が生じたからといって、必ずがんになるわけではありません。


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