代謝遺伝子とは何か?

代謝遺伝子とは何か?

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がん研究にひとつの転機が訪れたのは、2009年のことです。その背景には、ゲノム解析を綿密にしたことや、代謝物の解析をする技術が向上したことがあげられます。ゲノム解析技術がまだ未熟だったころ、がんの原因となる遺伝子の変異について研究を行う場合、研究者の多くは今までに見つかっているがん遺伝子やがん抑制遺伝子、またはそれらに近縁の遺伝子群にだけ注目をしていました。すべての遺伝子を調べている余裕がなかったのです。

 

しかし、コンピューターの能力が進歩し、解析技術も向上してくると、とりあえず全部調べてみるという、「アンバイアスト・アプローチ(偏りのない探究法)」ができるようになりました。

 

代謝遺伝子とは何か?

 

その結果、脳腫瘍の細胞では、代謝に関係するある遺伝子が変異を起こしていることが分かりました。この遺伝子はIDHと名付けられ、糖を分解した物質からアミノ酸をつくり出す時に活動をはじめます。それまでは、がんのゲノム科学的研究では、基本的な代謝についてはあまり注目を集めてはいませんでした。

 

IDHが変異することによって、細胞内には代謝で生み出されるある分子(2−HG)が正常な細胞の約100倍も蓄積することが分かりました。この分子は、まるでがんのように細胞を振る舞わせる活性をもつと伝えられています。

 

 

そこで、このような物質を「造腫瘍性代謝物(オンコメタボライト)と名付けようと提案されています。ワールブルクの発見がきっかけとなって始まった古くて新しい研究分野、つまりがん特有の代謝のしくみの研究は、現在急ピッチで進められつつあります。いま、その成果にもとづいて新しいがん治療の方法が現れることに期待が高まっています。


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