細胞の増殖を抑える遺伝子について

細胞の増殖を抑える遺伝子について

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人間の体は、絶え間なく新陳代謝が繰り返されています。それにもかかわらず、体を形づくる細胞は、いつも適切な数に保たれています。これは、人間の体に、非常に精妙な細胞の数を調節するシステムが備わっているからです。

 

そのひとつは、さきほど述べた細胞の増殖を促進する“正のしくみ”です。そしてもうひとつは、細胞の増殖を止める“負のしくみ”です。ある種類の細胞は、隣の細胞やそれを包む物質とのあいだに“すきま”があれば増殖し、このすきまがなかったら増殖を止めるようにプログラムされています。

 

 

細胞の表面にはある物質が結びついていて、これを「細胞接着分子」とよびます。この分子は、自分がくっついている細胞が他の細胞に触ると、即座にそれを感じ取り、その間をつなぐ“連結装置”としてはたらきます。

 

同時に、この分子は自分のいる細胞のなかに「増殖を止めろ」という命令を送ります。結果、細胞の増殖が止まるということです。一方、細胞は、その構造の支えになり、代謝を促進する固形物質(細胞外マトリックス)をつくりだします。

 

細胞の増殖を抑える遺伝子について

 

細胞の表面には、この物質を感じ取るための“専用アンテナ”もついています。細胞が増殖してすき間を埋め、アンテナが細胞外マトリックスに触ると、同じく細胞の増殖にストップがかかります。

 

もし組織の中のすき間を感じ取るこれらの物質の遺伝子が異常をきたすと、一体どうなるでしょうか?細胞の増殖が延々とおこなわれる可能性があります。実際に、多くのがんでは、遺伝子の変異によってこれらの物質がうまくはたらかなくなっています。

 

 

なので、がん細胞はたとえ組織内のすき間がなかったとしても、それを気にせず平気で分裂を繰り返すのです。細胞の増殖を抑えるための大事な物質がもう一つあります。それは、細胞に「増殖をやめなさい」と命令するホルモンに似たたんぱく質です。

 

細胞がこのたんぱく質を受信すると、細胞の中に変化が起こって細胞増殖に必要な遺伝子のスイッチがOFFになり、かつ細胞の増殖を止める遺伝子のスイッチがONになります(遺伝子の発現)。しかし、ほとんどのがん細胞は、この信号を受け取るための物質が変化しているため、信号がわかりません。なので、延々と増殖し続けることになります。

 

 

これまで見てきたような、細胞の増殖を止めさせる物質を正常な遺伝子をがん細胞の中に組み込むと、細胞のがんとしての性質を抑制できる場合があります。そこでこれらの遺伝子には、「がん細胞抑制遺伝子」という名前がつけられました。


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