がん幹細胞の場所はどこなのか?

がん幹細胞の場所はどこなのか?

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腸の幹細胞は、腸小窩(腸の機能上の単位)の中にあり、筋繊維芽細胞や上皮細胞の系統である間葉系細胞の近くで自己複製を繰り返しています。このエリアでは成長因子であるウィントが、腸の幹細胞の増殖や分化を引き起こしていることが知られています。

 

大腸がんについては、何ががん幹細胞のニッチをつくっているのかまだわかっていませんが、間葉系幹細胞、または筋繊維芽細胞ではないかと見られています。ウィントは、健康な腸の幹細胞へ作用するように、がん幹細胞の増殖も引き起こしているとされています。

 

ウィントによって活性化された細胞は、核の中にベータカテニンと呼ばれるたんぱく質を増やしていきます。ベータカテニンを核内に蓄積したがん細胞が、筋繊維芽細胞と一緒にがんの浸潤部分で細胞の塊をつくりだすのです。筋繊維芽細胞が、果たして本当にがん幹細胞のニッチを構成しているのかどうかは解明されていないものの、このようないくつかの実験により、その可能性が高まってきました。

 

がん幹細胞の場所はどこなのか?

 

がん幹細胞が見つけられた経緯

 

過去の実験から、数種類のがんにおいて、がん幹細胞が血管ニッチをつくりだしていることがわかってきています。では休眠期のがん幹細胞ではなく、分裂を繰り返す、いわゆる悪性のがん幹細胞も、同じく血管の近辺にあるのでしょうか。

 

健康な幹細胞は胎児期にはさかんに自己複製を繰り返しますが、ひとたび成体になると自らを維持するために休眠をはじめます。がん幹細胞は、無制限に自己複製を繰り返している可能性があります。この増殖の仕組みに着目すると、がん幹細胞が増殖していくメカニズムと胎児期の正常な幹細胞が自己複製を繰り返すメカニズムには共通点があるといえます。

 

それを解明するために、造血幹細胞を使って調べた結果があります。まず胎児期の造血幹細胞には存在するのに、成体になり休眠期に入った造血幹細胞には存在しないたんぱく質分子を取り出しました。そこで明らかになったことは、このたんぱく質分子はPSF1と呼ばれる分子で、増殖中の幹細胞に特異的に現れるということ、そしてマウスの実験では、この分子を取り除くと、いかなる細胞にも分化できるはずの、いわゆる全能性幹細胞さえも、増殖が完全に止まってしまうということでした。

 

 

さらに染色体におけるPSF1の遺伝子座を半分なくしたマウスの実験では、遺伝子座が欠け、骨髄が破壊されているので、必要な造血幹細胞が充分に作られず、骨髄の回復が望めないことも明らかになりました。

 

これらの実験からわかったことは、PSF1というたんぱく質分子が、分化が行われないような未熟な幹細胞レベルにおいても、増殖のために大変重要な役割を果たしているということでした。

 

そこで、PSF1遺伝子が、細胞増殖中に現れることを考慮に入れ、活発に増殖を繰り返しているがん幹細胞の存在する場所を探ると、やはりがん近辺の成長した血管の近くに多く見つけることができました。


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