がん幹細胞の理論とは?

がん幹細胞の理論とは?

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造血幹細胞がさかんに研究されはじめたのは、1990年代はじめごろです。これにより、造血幹細胞を移植することにより、骨髄を再び構築するための臨床的治療法が確立されはじめました。

 

そしてこのとき、2つの大事な技術が開発されました。一つ目は、細胞表面マーカー(細胞表面にあって細胞の性質などをあらわす目印となるたんぱく質などの物質)で、いわゆる標識技術です。二つ目は、ヒト造血幹細胞をマウスへ移植したときのモデルの作成技術です。

 

ヒト白血病細胞を免疫不全マウス(免疫機能が完全になくなってしまったマウス)に移植すると、そのマウスはヒト急性骨髄性白血病にかかります。しかし、この研究である重要なことが見つかりました。

 

がん幹細胞の理論とは?

 

それは、ある特定の細胞群──CD34抗原を細胞表面にもっていて、CD38抗原はもたない細胞──だけが白血病を発症させる力を持っていたことがわかりました。そういった細胞は白血病細胞全体を見ても、およそ100万個に1個くらいの割合でしか存在しないのですが、これ以来この細胞は白血病を発症させる細胞、つまり「白血病幹細胞」として認識されるようになりました。

 

その後、こういったがん幹細胞の概念は、固形がんにも当てはめて考えられるようになりました。たとえば乳がんの細胞株をマウスに植えつけるモデルでは、細胞の表面のCD44抗原が陽性、DC24抗原が陰性もしくは弱陽性の細胞に乳がんを生まれさせる力があることが分かっています。

 

 

この細胞から発生した腫瘍から同じ細胞の表現型を示す細胞を、もう一度回収して移植すると、がんが棲みついてがん病巣がつくられるのですが、それ以外の細胞からがんはつくられません。この細胞とそれ以外の細胞の形はそこまで大きな違いはなく、細胞周期もあまり変わりません。

 

この発表が行われた後、あっというまに他のいろいろながんでも解析が進められました。そして同じく脳腫瘍や大腸がんでも、がんをつくる特殊な細胞があることが確認されました。さらにどの例をみても、がんをつくるがん細胞からは、がんをつくる能力は低く、悪性度の低いがん細胞しか生まれないことが分かりました。

 

こうして、がん幹細胞ががん細胞をつくりだすという考え方が、急速に広まっていったのです。


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