細胞周期で比較する正常細胞と癌幹細胞

細胞周期で比較する正常細胞と癌幹細胞

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そもそも正常組織の中にある幹細胞は、ほとんどのものが休んでいる状態です。ただし精巣などは例外です。精子を延々と作り続けている精巣では、精子の幹細胞は止めどなく分裂を繰り返しています。

 

また、胎児期の組織では、組織が急に増えたり成長したりすることに対応するため、幹細胞の自己複製と前駆細胞への分化が盛んにおこなわれています。そして生まれた後、とくに成人になると組織は増えなくなりますが、これは組織が維持するだけで十分となるために、幹細胞が増殖しなくてもよくなり、休眠状態に入るのです。

 

今までは「がん幹細胞は休眠している」との考え方が一般的でした。休眠中の細胞は外来因子の影響をほとんど受けないですし、がん幹細胞抗がん剤に抵抗力がある細胞だという定義から、これは休眠細胞だと考えたほうが辻褄が合ったのです。しかしこれまでに、がん原発巣のがん幹細胞が眠っているという証拠は何も提示されていませんでした。

 

細胞周期で比較する正常細胞と癌幹細胞

 

一方、マウスを使って行われた造腫瘍能、要するにがんを生じさせたり進行させたりする能力の違いによるがん幹細胞の研究では、少ない量でもがんをつくり出すことができるがん幹細胞と、それ以外のがん細胞とでは、細胞周期に特に違いがないことが報告されています。

 

もちろん、わずかでもがん幹細胞の中に“休眠中”のものが存在していたとしたら、それを解析するのは非常に難しいのです。乳がんなどでは、治療後数年経ってから再発することがあります。この症例は、眠っていたがん幹細胞が数年経過してから目を覚まし、もう一度がんを形成したと考えても不思議ではありません。

 

 

こういった長期にわたる休眠が起こる可能性があるとすると、今行われている免疫不全マウスを使った研究では、がん幹細胞を解析するのは難しいということになります。なぜかというと、マウスの寿命は2年ほどだからです。

 

これから先、眠っているがん幹細胞を認識する遺伝子や分子が見つかれば、その分子が現れたことをもとに、がん幹細胞の細胞周期を解き明かすことができるに違いありません。


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