がんが転移して成長していく過程とは?

がんが転移して成長していく過程とは?

このエントリーをはてなブックマークに追加  

がん幹細胞転移の犯人だということはわかりましたが、がん幹細胞を、その特徴から見つけ出すのは困難な道のりになりそうです。がん幹細胞は、その行動がとても複雑かつ多様なのです。

 

このことは、がん研究センターとハイデルベルグ大学病院の共同研究機関である、ドイツ国立腫瘍疾患センターのハンノ・グリムの実験からもわかります。トランプらががん幹細胞を、その外的特徴から見分けようとしたのに対し、グリムはがん細胞の表面に目印をつけて、その動きを追うことを試みたのです。

 

がんが転移して成長していく過程とは?

 

グリムらは、がん患者の大腸からがん細胞をとりだし、その表面に目印をつけました。がん細胞にウイルスを感染させて、ウイルス遺伝子をがん細胞のゲノムに組み込むという実験です。こうすれば、目印をつけたがん細胞とその娘細胞を、他の細胞から区別することができ、そのうちどれが、転移の犯人かを見つけることができると考えたのです。 

 

目印をつけた細胞をマウスに移植したところ、すべてのがん細胞があらたに腫瘍をつくるわけではないという実験結果がでました。そしてそれ以外にも興味深い結果がでたのです。あるがん幹細胞を、マウスに移植すると、一度がんをつくりましたが、そのマウスから別のマウスに移植してもがんは発生しませんでした。転移は一度きりだったのです。

 

 

しかしこれが、強力ながん幹細胞だった場合に、同じように移植すると、移植のたびにがんが発生しました。そしてまた別のがん細胞群は、はじめの数回の移植後では、がんを発生させなかったにもかかわらず、その後突然がんを発生させたのです。その仕業は、まるで“潜伏工作員”のようでした。

 

グリムは以上の実験結果からこう結論付けています。がん幹細胞が、みな同様に転移をするのではなく、がん幹細胞のうちごく一部が、自らを変化させながら少しずつ腫瘍をつくり、転移がんへと成長させていく、と。

 

腫瘍をつくりだすメカニズムは、実際はこれまで考えられていたよりもずっと難解かつ複雑なようです。ウイルスでがん細胞に目印をつけるというグリムの手法は、腫瘍形成のメカニズムとがん幹細胞の転移に関わる働きを明らかにしていく手助けになるかもしれません。


このエントリーをはてなブックマークに追加