遺伝子の変異が、がん細胞を生み出す

遺伝子の変異が、がん細胞を生み出す

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ぱっと見共通性のない発がん物質、がんウイルス、電離放射線などは、一体どうやって細胞をがん化させていくのでしょうか?これらの発がん因子に共通している性質があります。それは、細胞の中の遺伝物質(DNA)を傷つけたり、その構造を変えてしまうというものです。

 

アメリカのブルース・エイムスは、1974年にサルモネラ菌という細菌を使って、遺伝子が変異していることを見極めるための巧妙な方法を発表しました。エイムスは、ヒスチジン(アミノ酸の一種)を培養液に入れないと増殖しないようなサルモネラ菌の変異株を何個も分離しました。これらは、ヒスチジン無しの寒天培養地の上ではコロニーをつくりません。この培地に、ある種の化学物質を加えて培養すると、コロニーができる場合があります。

 

遺伝子の変異が、がん細胞を生み出す

 

つまりこれは、一度変異して不活化していたヒスチジン合成酵素の遺伝子に、もう一度変異が起こって活性ができるようになったということです。エイムスは、この実験に必要な材料を、世界中の研究者たちが求めるままに気前よく配りました。そういったこともあり、発がん物質の大体の部分が遺伝子に影響をおよぼす能力を身につけていたことが分かりました。

 

一方、がんウイルスは、宿主の細胞の中に特殊な遺伝子を持ってきて、それを宿主のDNAに組み込むことによってがん化させると考えられました。また、放射線や紫外線は、細胞の中のDNAを引き裂いたり、細胞が分裂するときにDNAの複製ミスを誘発することがわかりました。

 

こうやってDNAはいったん構造が変化してしまうと、細胞分裂の際にそれが忠実にコピーされ、そこから生まれた2個の細胞(娘細胞)に引き継がれると予想されます。これは、一旦細胞ががん化してしまうと、それ以降は延々とがん細胞が生まれ続けるという現象をうまく説明できています。

 

 

これに対し、たとえば細胞のがん化がたんぱく質の変化によって起こると考えてみると、細胞分裂を繰り返すたびにだんだんたんぱく質が薄くなっていき、がん化作用自体もそのうち消滅するはずです。これでは、実際のがん細胞に起こっている性質の永続的変化については説明ができません。

 

では、遺伝子の変異によって細胞のがん化が起こるとすれば、一体どういった変異が起きると、細胞ががん化をしていくのでしょうか?発がん物質や放射線による遺伝子変異の頻度と、細胞のがん化の頻度を比べてみると、単純にDNAに傷がつけばよいわけではないことが解明されました。ある遺伝子が変異を起こした場合にのみ、細胞ががん化すると予想されました。

 

ということは、この特定の遺伝子が何なのか調べることによってがん化のメカニズム解明に一歩近づけるはずです。次項では、このがん化に関する遺伝子について見ていきましょう。


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