発がんのしくみと、生物進化の原理は同じ

発がんのしくみと、生物進化の原理は同じ

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この「ごくまれに起こる設計図のコピーの間違い」というのは、生物多様性の起源を語るにはたいへん重要なことです。それは、自然選択説でいう「今までより環境に適した性質をもった個体」要するに“変り種”をつくるのに必要な原動力となっています。

 

昔からの論争の種であった生物の適応(順応)と進化のはなしですが、有名なものではキリンの長い首です。博物学者はいわば直感で「高い木になっている実や葉を食べることに適応させるために、キリンの首が長くなった」と考えたのですが、対して自然選択説では「キリンの祖先となった生物種の集団のなかに、あるとき首の長い変り種が生まれた。その個体の子孫は生存競争に勝っていき、それが繁栄したのでキリンという種がつくられた」となるのです。

 

この仮説は、「種の特徴のほとんどは安定であり、環境が変わったとしても保持される(たとえば動物園で生まれ育ち、高木の葉を食べなくても生きていけるキリンも首が長い)」という生物の性質とも矛盾がおきません。

 

発がんのしくみと、生物進化の原理は同じ

 

また、生物がとるとても変わった行動や形態、驚くほど複雑なしくみなども、自然選択と変異という自然現象の積み重ねによって“神の意思”を取り入れなくても説明できます。この考えにもとづくと、現在地球上に存在する生物はみんな、生態系や環境のたび重なる変化を生き抜いてきたエリートたちであり、過去の成功の秘訣がそのゲノムDNAのなかにすべて詰め込まれていると考えられます。

 

生物の行動や形態をみると、まるで特定の目的を達成するために綿密にプログラム、もしくはデザインされたもののように思えますが、実は、長い長い年月をかけて繰り返された試行錯誤(要するに「適者生存」)の結果が、現在の生物種にたどり着いたものとも言えます。

 

 

なぜこんなに進化の話を延々としてきたかというと、発がんの機構も基本的には生物進化とは同じ原理、つまりダーウィン流の進化論で説明がつくと考えられるからです。しかし、それらの時間のスケールはかなり違います。万年〜億単位の時間を必要とするのが生物進化ですが、数年〜数十年で発がんは起こるので、4桁以上も違いがあります。

 

また、関係する細胞も違ってきます。世代を超えて伝わる生殖細胞の変異が生物進化ですが、体細胞からうまれているのががんです。さらにいうと、「細胞レベル」と「個体レベル」の違いにも注目する必要があります。生物個体は独立で生存することができ、生殖もできます。なので、集団内に“変り種”が出現すると、それ自体が環境変化のときに種の存続・繁栄に役立つかもしれないのです。

 

 

しかし、個体レベルでがんはやっかいな疾患ですが、細胞レベルではこれからくわしく見ていくように、いろいろな能力をつけていって逆境でも生き延びられるエリート細胞ともいえるのです。

 

がん細胞の何が問題かというと、個(細胞)が全体(個体)の要求や運命を無視して利己的に繁殖しだすところにあります。


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